
本当に広くなる?機械式駐車場の平面化で変わる”駐車スペース”
機械式駐車場を平面化すると「駐車スペースが広がる」「大きな車も停められる」といった期待を抱く方は多いかもしれません。たしかに、機械式駐車場装置が撤去されることで、これまで制限されていた空間が物理的に解放されるため、ゆとりある駐車区画を設けられる可能性は高まります。しかし、実際にどれだけ広くなるかは、敷地の形状や周囲の構造物、採用する工法などによって大きく左右されるのが実情です。また、平面化後は駐車できる車のサイズを管理組合が独自に定める必要があるなど、新たなルールづくりも求められます。本記事では、機械式駐車場を平面化した際にどのように車両制限が変わるのか、その実情と注意点について詳しく解説します。
平面化後の駐車スペースは本当に広がるのか?
例えば、一般的な機械式駐車場の収容可能車両サイズは以下の通りです。

- 全長:5,000mm以下
- 全幅:1,800mm以下
- 全高:1,550mm以下(ハイルーフ対応型で2,000mm程度)
これらの制限は、機械式駐車場メーカーが機械装置の安全性と耐久性の観点から定めている規格であり、物理的にそれ以上のサイズの車両は入庫できません。
平面化後の駐車区画の「車長」「車幅」の制限

上の写真のように平面化後は機械式駐車場設備の構造物が撤去され、地面がフラットになるため、これまで装置によって制限されていた空間が広がります。その結果、機械式に比べてゆとりのある区画を設けられる可能性が高まるのは事実です。ただし、実際に確保できる駐車区画の幅や奥行きは、敷地の形状や障害物の位置などにより異なります。
現場環境によって「車長」「車幅」は制限される
平面化すれば無条件で広くなるわけではありません。実際にどれだけのスペースが確保できるかは、以下のような現場環境の制約に左右されます。
駐車車両制限を決める外的要因
- 建物の壁や柱との距離
- 敷地境界線までの離隔
- 給排水管や電気配線などのインフラの干渉
上のような固定的な要素があることで、思ったほど広い車室が取れないケースもあり、計画段階では慎重な現地調査が必要です。

上の写真の場合には、駐車区画と壁との間隔が狭いため仮に平面化してもドアの開閉スペースを考慮すると、大幅な車幅制限の緩和とはなりません。
「車高」「重量」の制限はどうなるのか?
平面化によって、機械式駐車所特有の「全高制限」は撤廃されます。ハイルーフ車やSUVも問題なく駐車できるようになり、利用者の選択肢は広がります。

上の写真のように駐車場までのアプローチ動線(スロープの天井高や梁、入り口の狭さなど)により、車高の制限が残る場合もあります。物理的に通り抜けできなければ、駐車場自体が広くても意味がありません。計画段階で、周囲の構造物も含めてチェックすることが重要です。
鋼製平面化工法の場合、重量制限が残る
鋼製平面化工法(鋼板でピット上部を覆う方式)を採用した場合、耐荷重には注意が必要です。標準的な仕様では「2.5トン程度まで」の車両に対応する設計が多く、これを超える重量の車両は駐車できない可能性があります。
具体的には、日本車では以下のような大型SUV・高級車が該当します。これらの車種を所有している場合は、駐車区画の耐荷重を必ず確認することが求められます。
- トヨタ ランドクルーザー
- レクサス LX600
<機械式駐車場と平面化後の車両制限比較>
制限項目 | 機械式駐車場 | 平面駐車場 (平面化後) |
---|---|---|
全長 | 最大5,000mm (メーカー規定) | 敷地条件による (場合により拡大可能) |
全幅 | 最大1,800mm (メーカー規定) | 敷地条件による (場合により拡大可能) |
全高 | 最大1,550mm (一般型) 最大2,000mm (ハイルーフ対応型) | 制限なし (アプローチの高さによる制約あり) |
重量 | 2,300kg程度 (装置仕様による) | 標準で2,500kg程度 (鋼製平面化工法の場合) |
制限の 決定者 | メーカー (安全性確保のため) | 管理組合 (管理規約・使用細則による) |
上の表は一例です。
平面化後は「管理組合」がサイズ制限を定める
機械式駐車場では、車両サイズの制限は機械式駐車場メーカーが明確に定めています。これは安全運用のため、ユーザーが勝手に変えることはできません。
平面化後の駐車場には、機械式駐車場のような構造上の物理的な制限が存在しません。そのため、駐車できる車のサイズや種類については、管理規約や使用細則に基づいて管理組合が独自に定めることになります。
今回のポイント
機械式駐車場を平面化することで、車両制限が緩和されると思われがちですが、実際には敷地の形状やアプローチの高さ、耐荷重などの物理的な制約が大きく影響します。また、平面化後は車両サイズの基準を管理組合が定めることになるため、事前にルールの見直しや住民への周知も重要です。「広くなる」や「どんな車でも停められる」といった期待だけで進めるのではなく、現場ごとの条件をしっかり調査し、施工方法や運用ルールをセットで検討することが、後悔しない平面化につながります。