機械式駐車場の解体・平面化に必要な総会決議|普通決議・特別決議の判断と議案書例

マンションの機械式駐車場を解体・撤去して平面化する場合、管理組合の総会決議が必要になります。ただし、「機械式駐車場の撤去は必ず特別決議」と一律に判断できるわけではありません。

工事の規模、平面化後の用途、駐車台数の減少、建物や敷地の形状・効用への影響、管理規約の変更、特定の区分所有者への影響などにより、必要な決議と準備が変わります。

また、改正区分所有法が2026年4月1日に施行され、総会の定足数や多数決要件に関する扱いも変わりました。過去の記事や古い規約例をそのまま使わず、総会の招集時点で施行されている法令と自分たちの管理規約を確認することが重要です。

この記事では、普通決議と特別決議を分ける考え方、規約・使用細則の扱い、利用者への対応、総会議案書のひな形を解説します。

結論|工事内容を確定してから決議要件を判断する

総会へ上程する前に、少なくとも次の点を整理します。

  • 機械式駐車場が共用部分か附属施設か
  • 全面撤去か、一部撤去か
  • 地下ピットを埋め戻すか、鋼製床で覆うか
  • 平面化後も駐車場として使うか、別用途へ転用するか
  • 工事前後の駐車台数と区画配置
  • 建物・敷地の形状または効用への影響
  • 管理規約別表や使用細則を変更するか
  • 現在の利用者にどのような不利益が生じるか
  • 工事中・工事後の代替駐車場をどうするか
  • 附置義務や開発許可などに関する手続き

この情報がない段階では、普通決議か特別決議かを確定できません。施工会社の見積書だけで判断せず、管理規約と工事図面をそろえ、必要に応じてマンション管理士や弁護士などへ確認します。

普通決議と特別決議の違い

普通決議

日常的な管理、予算・決算、一定の修繕工事、使用細則の制定・変更などは、管理規約に定める普通決議の対象となるのが一般的です。

国土交通省のマンション標準管理規約コメントでは、共用部分の変更について、大規模または著しい加工を伴う駐車場・駐輪場の増改築は特別多数決議、不要になった設備の撤去などは普通決議で実施できる例が示されています。これは判断の参考になりますが、個別工事の結論を直接示すものではありません。

特別決議

共用部分の変更のうち、形状または効用の著しい変更を伴うものや、管理規約の設定・変更・廃止などでは、区分所有法と管理規約に基づく特別決議が問題になります。

2026年4月施行の改正法を踏まえ、現在の決議要件は古い解説と異なる可能性があります。招集通知を出す時点の法令、自分たちの管理規約、定足数、議決権の数え方、委任状・議決権行使書の扱いを確認してください。

平面化は必ず特別決議になるのか

必ずしもそうとは限りません。

機械装置を撤去しても駐車場としての用途を維持し、工事の規模や形状・効用への影響が限定的であれば、普通決議として扱える可能性があります。一方で、次のような場合は特別決議を要する可能性が高くなるため、慎重な確認が必要です。

  • 大規模な埋め戻しや構造変更を行う
  • 駐車場を廃止して駐輪場など別用途へ大きく変更する
  • 駐車台数や配置を大幅に変更する
  • 管理規約の共用部分・附属施設・別表を変更する
  • 建物または敷地の形状・効用を著しく変更する

「鋼製平面化工法なら普通決議」「埋め戻し工法なら特別決議」のように、工法名だけで決めることもできません。工事範囲と完成後の状態を総合して判断します。

決議要件を整理するチェック表

確認事項主な資料判断への影響
駐車場の位置づけ管理規約、別表、竣工図共用部分・附属施設の確認
工事範囲平面図、断面図、施工計画変更の規模を判断
完成後の用途完成図、運用案効用の変更を判断
駐車台数工事前後の台数表利用者・附置義務への影響
規約の記載管理規約、使用細則規約変更の要否
特定所有者への影響契約一覧、利用状況承諾の要否を検討
費用と資金見積書、資金計画予算・積立金支出の決議

管理規約と使用細則も確認する

管理規約を変更する場合

機械式駐車場の区画数や位置が管理規約の本文・別表に記載されており、工事後の状態と合わなくなる場合は、規約変更が必要になる可能性があります。規約変更には、工事承認とは別に法令・規約所定の決議要件を満たす必要があります。

使用細則を変更する場合

平面化後は、次のようなルールの見直しが考えられます。

  • 利用できる車両の全長・全幅・全高・重量
  • 区画の割当て・抽選方法
  • 駐車場使用料
  • EV充電区画の利用条件と課金方法
  • 来客用区画の予約方法
  • 車庫証明に関する手続き

使用細則の制定・変更を普通決議としている規約が多いものの、自分たちの規約を必ず確認します。工事議案、規約変更議案、使用細則変更議案を分けて採決すると、何を承認したのか明確になります。

「特別の影響」を受ける区分所有者への対応

共用部分の変更が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす場合、その承諾が問題になります。ただし、現在の駐車場契約者に不便が生じるだけで、直ちに法的な「特別の影響」に当たるとは限りません。

判断では、駐車場専用使用権の有無、分譲時の契約、規約の内容、代替手段、影響の程度などを確認します。単なる月極の使用契約なのか、特定住戸に専用使用権が設定されているのかでも事情が異なります。

影響を受ける可能性がある人には、次の内容を個別に説明します。

  • 解体・平面化が必要な理由
  • 工事中に利用できない期間
  • 工事後の区画数と割当方法
  • 代替駐車場の候補、距離、費用
  • 契約終了・変更の時期と手続き
  • 費用負担または補償を行う場合の条件
  • 問い合わせ・異議申出の方法

法的な承諾が必要かどうかと、合意形成のために丁寧な説明を行うことは別の問題です。承諾が不要と考えられる場合でも、利用者への早期説明は欠かせません。

総会までの進め方

  1. 利用率、収支、故障履歴、将来需要を調査する
  2. 維持・更新・一部撤去・全面平面化を比較する
  3. 現地調査を行い、工法と完成後の配置を決める
  4. 附置義務、構造、排水などの条件を確認する
  5. 工事範囲と決議要件について専門家の見解を得る
  6. 現在の利用者へ個別に説明する
  7. 住民説明会を開催する
  8. 質問・回答と計画修正を記録する
  9. 議案書、見積書、図面、資金計画を配布する
  10. 総会で議案ごとに採決する
  11. 可決後に契約締結と工事準備を進める

住民の意向を調べる質問例は、機械式駐車場の解体・平面化アンケート例で紹介しています。説明会の準備は、機械式駐車場解体・平面化の住民説明会の進め方も参考になります。

招集通知と議案書に入れる内容

議案名だけを「機械式駐車場平面化の件」としても、組合員は変更内容を判断できません。少なくとも次の資料を用意します。

  • 検討に至った経緯
  • 現在の利用率と空き区画の推移
  • 点検・修理・更新費の状況
  • 維持案と平面化案の比較
  • 工事前後の平面図・断面図・完成イメージ
  • 工法、施工範囲、使用材料
  • 工事前後の駐車台数と車両制限
  • 工事費、予備費、支払条件、資金の出所
  • 施工会社と選定理由
  • 工期と駐車場の利用停止期間
  • 代替駐車場と費用負担
  • 規約・使用細則の新旧対照表
  • 工事後の保守・保証内容
  • 附置義務などの確認結果

招集通知には、決議対象を特定できるだけの要領を示します。総会当日に重要条件を追加したり、金額・工法・台数を理事会へ白紙委任するような議案は、後の紛争を招きやすくなります。

総会議案書のひな形

以下は構成例です。実際には工事内容、管理規約、決議要件に合わせて調整してください。

第○号議案 機械式駐車場の解体・平面化工事承認の件

1.提案理由

当マンションの機械式駐車場は設置から○年が経過し、直近○年間の平均利用率は○%となっています。点検・修理費は年間○円で、今後○年間に○円程度の部品交換・更新費が見込まれます。

理事会では、現状維持、設備更新、一部撤去、全面撤去を比較し、住民アンケートおよび説明会の結果も踏まえて検討しました。その結果、将来の駐車需要と維持管理費を考慮し、次の工事を提案します。

2.決議事項

次の内容による機械式駐車場の解体・平面化工事を実施し、その費用を○○会計から支出することを承認する。

3.工事内容

  • 対象設備:○号機、○区画
  • 撤去範囲:パレット、支柱、昇降装置、制御装置等
  • 平面化工法:○○工法
  • 完成後の用途:平置き駐車場○区画
  • 付帯工事:区画線、車止め、排水、照明等

4.工事金額

  • 契約金額:○○円(税込)
  • 予備費:○○円
  • 支出科目:修繕積立金会計○○費

5.施工会社

  • 会社名:株式会社○○
  • 選定理由:施工実績、見積内容、工期、保証等を比較した結果

6.工期

  • 着工予定:20○○年○月○日
  • 完成予定:20○○年○月○日
  • 利用停止期間:20○○年○月○日~○月○日

7.駐車場利用者への対応

  • 対象台数:○台
  • 代替駐車場:○○駐車場ほか
  • 費用負担:○○
  • 工事後の区画割当て:○○方式

8.理事会への委任事項

工事の目的、主要な仕様、上限金額を変更しない範囲の軽微な調整を理事会へ委任する。

9.添付資料

  • 工事前後の図面
  • 見積比較表・採用見積書
  • 工程表
  • 資金計画
  • アンケート集計結果
  • 説明会の主な質問と回答
  • 必要な規約・使用細則改正案

議案を分けた方がよい項目

次の内容は、決議要件や賛否の理由が異なるため、別議案にすることを検討します。

  1. 解体・平面化工事の実施と費用支出
  2. 管理規約本文・別表の変更
  3. 駐車場使用細則の変更
  4. 駐車場使用料の変更
  5. EV充電設備や駐輪場など追加設備の設置

複数の内容を一つの議案へ詰め込むと、一部には賛成でも別の項目には反対という意思を示しにくくなります。一方、相互に不可分な内容を分けると、一部だけ可決されて工事を実施できないこともあります。議案相互の条件関係を明記します。

総会当日に確認すること

  • 定足数を満たしているか
  • 出席者、委任状、議決権行使書を正しく集計したか
  • 区分所有者数と議決権数を区別しているか
  • 賛成・反対・棄権の数を議案ごとに記録したか
  • 利害関係や代理権に問題がないか
  • 議案の重要条件をその場で変更していないか
  • 質疑応答の要点を議事録へ残したか

「出席者の過半数」などの表現だけでは、区分所有者数と議決権数のどちらを指すか不明確です。管理規約と法令に従って両方を確認します。

よくある質問

機械式駐車場の撤去は必ず特別決議ですか?

必ずしも一律ではありません。工事の規模、形状・効用への影響、完成後の用途、規約変更の有無などで判断します。工事図面と管理規約をもとに確認してください。

平面化工事と規約変更は同じ議案で決議できますか?

まとめること自体が常に不可能とは限りませんが、決議事項と各要件を明確にする必要があります。何に賛成したのか分かるよう、別議案または明確に区分した採決を検討します。

現在の駐車場利用者全員の承諾が必要ですか?

全員の承諾が常に必要とは限りません。専用使用権、契約、規約、代替手段、影響の程度を確認し、法的な「特別の影響」に当たるかを個別に検討します。

総会で可決してから施工会社を決めてもよいですか?

概算予算だけを承認し、後で施工会社を選ぶ方法も考えられますが、委任範囲が広すぎると組合員が適切に判断できません。少なくとも工法、対象範囲、完成後の台数、上限額、選定方法を明確にします。

書面による議決権行使や委任状も賛成数に含められますか?

法令と管理規約の要件を満たすものは集計対象になります。ただし、記載不備、代理人の資格、議案修正時の扱いなどを事前に確認します。

使用細則だけ変えれば平面化できますか?

使用細則は利用方法を定めるもので、工事そのものの承認や共用部分変更、規約変更を代替するものではありません。必要な決議をそれぞれ整理します。

まとめ|「特別決議ありき」ではなく、工事と権利への影響から判断する

機械式駐車場の解体・平面化に関する総会では、次の点を押さえます。

  • 撤去・平面化が必ず特別決議とは限らない
  • 工事範囲、完成後の用途、形状・効用への影響を明確にする
  • 2026年4月施行の改正法と現行管理規約を確認する
  • 工事決議、規約変更、使用細則変更を分けて整理する
  • 専用使用権や特定所有者への影響を確認する
  • 工事前後の台数、費用、代替駐車場を議案書に示す
  • 総会当日に重要条件を追加・変更しない
  • 定足数と賛成数を区分所有者数・議決権数の両面で確認する

総会決議の成否だけを目標にせず、組合員が維持案と平面化案を比較できる資料を整え、利用者への影響も含めて判断できる状態を作ることが、後のトラブルを防ぐポイントです。

参考資料

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