機械式駐車場の埋め戻し工法とは?メリット・デメリットと施工手順を解説

機械装置だけでなく床下の空間もなくせるため、平面化後の管理を分かりやすくできる可能性があります。浅いピットや資材を搬入しやすい屋外では、鋼製床を設置する工法より費用を抑えられる場合もあります。

一方、埋め戻し材の重量、締固め不足による沈下、雨水・地下水の処理、既存躯体や建物基礎への影響を検討しなければなりません。「砕石を入れて舗装するだけ」の単純な工事ではありません。

この記事では、埋め戻し工法の仕組み、メリット・デメリット、施工手順、舗装と排水の考え方、見積りで確認する項目を解説します。

埋め戻し工法の仕組み

機械式駐車装置を撤去したピットへ、設計に基づく埋め戻し材を複数の層に分けて投入し、所定の方法で締め固めます。その上に路盤をつくり、周囲と高さを合わせて舗装します。

一般的な構成は次のとおりです。

  • 既存の鉄筋コンクリート製ピット
  • 砕石・再生砕石などの埋め戻し材
  • 締固められた路盤
  • アスファルトまたはコンクリート舗装
  • 区画線、車止め
  • 表面排水の勾配、側溝、排水桝

現場によっては、軽量な充填材、流動性のある材料、コンクリート系材料などを検討する場合もあります。材料を変えると重量、施工方法、費用、撤去のしやすさが変わるため、名称だけでなく仕様を確認します。

鋼製平面化工法との違い

比較項目埋め戻し工法鋼製平面化工法
ピット充填材で埋める空間として残す
駐車面アスファルト・コンクリート等鋼製床板
追加重量埋め戻し量に応じて大きくなる比較的抑えやすい
平面化後の管理舗装・沈下・排水を管理鋼材・床下・排水ポンプを管理
工期搬入、締固め、舗装・養生が必要部材製作後の現場組立ては短い場合がある
将来の再設置再掘削と残材搬出が必要ピットを残すため検討しやすい
費用浅いピットでは有利な場合がある深いピットでは差が縮まる場合がある

詳しい選び方は、鋼製平面化工法と埋め戻し工法の違いで解説しています。

埋め戻し工法のメリット

1.浅いピットでは費用を抑えられる場合がある

埋め戻す体積が小さく、ダンプ車や締固め機械を問題なく使用できる現場では、鋼製部材を製作する工法より初期費用を抑えられる可能性があります。

ただし、深いピット、搬入路が狭い現場、屋内、夜間・時間制限のある現場では、資材運搬と施工の費用が増えます。埋め戻し材の単価だけでなく、必要量、運搬回数、揚重、締固め、舗装まで含めて比較します。

2.機械設備と床下空間を廃止できる

適切に埋め戻せば、機械装置の駆動部や鋼製床下の点検空間を残さない計画にできます。機械式駐車場に必要だったチェーン、モーター、パレットなどの保守は不要になります。

排水ポンプも撤去できる場合がありますが、敷地全体の排水や地下水処理に使われている可能性があります。ポンプ撤去の可否は排水計画を確認して決めます。

3.一般的な舗装面に近い使い勝手を得やすい

アスファルトやコンクリートで仕上げるため、床板の継ぎ目がない駐車面をつくりやすくなります。適切な区画寸法と勾配を確保できれば、平置き駐車場として分かりやすい使い勝手になります。

4.鋼製床特有の防錆管理が不要

鋼製床板や鉄骨架台を設けないため、その床板の塗装や防錆補修は不要です。一方、舗装のひび割れ、わだち、沈下、目地、排水などの保全は残ります。

5.設計条件に応じて幅広い車両へ対応できる

鋼製床製品のような製品固有の車両重量上限ではなく、地盤・路盤・舗装・既存構造を含む設計条件に基づいて使用します。

ただし、「埋め戻せば荷重制限が一切ない」という意味ではありません。消防車、配送車、大型SUV、重量のあるEVなどの乗り入れを想定する場合は、完成後の用途と車両荷重を設計者へ伝えます。

埋め戻し工法のデメリットと注意点

1.埋め戻し材による重量が加わる

ピット内部へ大量の材料を充填するため、既存ピット、周辺地盤、建物基礎へ重量が加わります。特に、建物と一体になった地下ピット、基礎に近接する場所、軟弱地盤では、構造と地盤への影響を確認します。

「1区画当たり○トン」といった一般値だけで判断せず、ピットの実測寸法と材料の単位体積重量から現場ごとに算定します。

2.締固め不足や材料変化による沈下が起こり得る

砕石を一度に投入すると、下部まで十分に締め固められず、完成後に沈下するおそれがあります。沈下すると、舗装面の段差、ひび割れ、水たまり、車止めの傾きなどにつながります。

施工計画では次を確認します。

  • 1層当たりの施工厚さ
  • 使用する締固め機械
  • 狭い隅部や配管周辺の施工方法
  • 材料の品質と粒度
  • 締固め度を確認する試験の有無
  • 完成後に沈下した場合の保証範囲

3.排水計画を作り直す必要がある

ピットを埋めると、従来の排水経路やポンプをそのまま使えない場合があります。雨水をどこへ流すか、舗装面にどの方向の勾配を付けるか、側溝・排水桝へ接続できるかを設計します。

既存ピットの底や壁へ水抜き穴を設ける方法が検討されることもありますが、躯体、防水、地下水、周辺地盤へ影響するため、現場判断で安易に穴を開けてはいけません。構造・排水計画に基づいて決定します。

4.将来の機械式駐車場再設置が難しくなる

再設置するには、舗装を撤去し、埋め戻し材を掘削・搬出し、ピット躯体を調査・補修する必要があります。そのため、鋼製平面化工法より費用と工期が大きくなりやすいと考えられます。

「再設置は絶対に不可能」ではありませんが、現実的な選択肢として残したい場合は、埋め戻し前に十分検討します。

5.資材搬入と騒音・振動が増える場合がある

砕石を運ぶダンプ車の往来、投入、締固め、舗装に伴う騒音・振動が発生します。住宅に近い場所では、搬入経路、時間帯、車両待機場所、粉じん・泥の持ち出し対策を施工計画へ入れます。

6.仕上げ舗装の補修が必要

アスファルトは施工後の利用再開が比較的早い一方、気温、紫外線、荷重、油類などで劣化します。コンクリートは耐久性を確保しやすい反面、養生期間、目地、ひび割れへの配慮が必要です。

「アスファルトは必ず10年で全面更新」など一律には決められません。仕様、施工品質、利用状況、環境に応じて点検・補修します。

一般的な施工手順

1.現地調査・設計

ピット寸法、躯体、建物基礎、地盤、地下水、排水、搬入路を調査します。埋め戻し量と追加重量を算定し、材料、締固め方法、舗装仕様を決めます。

2.仮設・安全対策

工事区画を閉鎖し、養生、転落防止、搬出入経路を設けます。装置の電源を停止し、工事中の代替駐車場と住民動線を案内します。

3.機械式駐車装置の解体・撤去

パレット、支柱、駆動装置、制御盤などを施工計画に沿って分解し、搬出します。基礎や埋設配線をどこまで撤去するかは見積書で明確にします。

4.ピット清掃・躯体調査

堆積物や油汚れを除去し、ひび割れ、漏水、露出鉄筋、不要配管を確認します。埋めた後は見えなくなるため、補修箇所と施工前写真を記録します。

5.排水設備・開口部の処理

既存排水ポンプ、配管、電源の役割を確認し、撤去、残置、更新を決めます。水抜き、側溝、排水桝との接続など、完成後の水の流れを確定します。

6.埋め戻し材の投入・締固め

指定材料を所定の厚さごとに投入し、各層を締め固めます。壁際、隅部、既存配管周囲など、機械が届きにくい場所も施工します。必要な品質管理試験と写真を記録します。

7.路盤・舗装

路盤高さと勾配を調整し、アスファルトまたはコンクリートで仕上げます。既存舗装との取り合い、段差、目地、排水方向を確認します。

8.区画整備・完成検査

区画線、番号、車止めなどを施工します。高さ、勾配、平たん性、排水、区画寸法、仕上がりを検査し、完成図書と保証書を受け取ります。

埋め戻し材の選び方

砕石・再生砕石

一般的な候補ですが、粒度、締固めやすさ、品質のばらつき、不純物の有無を確認します。「再生材」という名称だけで品質を判断せず、材料規格や出荷資料を求めます。

軽量な充填材

既存構造や地盤への追加重量を抑える必要がある場合に検討されることがあります。通常の砕石より材料費が高くなる可能性があり、強度、吸水性、施工方法、長期安定性を確認します。

流動性を持つ充填材

締固め機械が入りにくい場所や隙間へ充填しやすい材料もあります。ただし、重量、硬化後の掘削性、排水、既存躯体への圧力、費用などを設計で検討します。

材料は安さだけで選ばず、現場条件と完成後の用途に合わせます。

アスファルトとコンクリートの比較

比較項目アスファルト舗装コンクリート舗装
利用再開比較的早い所定の養生期間が必要
初期費用抑えやすい場合がある高くなる場合がある
補修部分補修しやすい目地・ひび割れ補修が必要
夏季高温で軟化・変形することがある表面温度は上がるが変形しにくい
仕上げ既存アスファルトと合わせやすい強度と厚さの設計が重要

仕上げ材だけでなく、下部の埋め戻しと路盤が安定していることが重要です。表面だけ丈夫にしても、下部が沈下すれば段差やひび割れが生じます。

見積りで確認する項目

項目確認内容
解体撤去する装置・基礎・配線・排水設備
調査・設計ピット測量、構造・地盤・排水の検討
埋め戻し材種類、規格、必要量、単位体積重量
搬入車両台数、経路、誘導員、道路養生
締固め層厚、機械、隅部の方法、品質試験
排水ポンプ撤去・残置、水抜き、側溝接続
舗装材料、厚さ、鉄筋・目地、養生期間
仕上げ区画線、車止め、段差処理
工期利用停止期間、雨天時の扱い
保証沈下、ひび割れ、排水不良の範囲と期間

各社へ同じ完成条件を示し、「一式」ではなく数量と仕様が分かる見積書を依頼します。特に、埋め戻し材の必要量と締固め方法が書かれていない見積りは比較が困難です。

埋め戻し工法が向いている可能性があるケース

  • ピットが比較的浅い
  • 屋外で搬入路と重機スペースを確保できる
  • 将来、機械式駐車場を再設置する予定がない
  • 床下空間や排水ポンプを残したくない
  • 周囲の舗装と同様の仕上げにしたい
  • 構造・地盤上、埋め戻し荷重を許容できる

反対に、深いピット、屋内、建物基礎に近い場所、搬入路が狭い場所、将来の再設置を残したい場合は、鋼製平面化工法も比較します。

よくある質問

埋め戻し工法は鋼製平面化工法より安いですか?

浅いピットや搬入条件のよい現場では安くなる場合があります。深いピット、狭い搬入路、特殊な充填材、排水工事が必要な場合は差が縮まったり、逆転したりする可能性があります。

排水ポンプは必ず撤去できますか?

必ずではありません。敷地全体の排水や地下水処理に関係している場合があります。完成後の排水経路を設計してから撤去・残置を決めます。

埋め戻せば重量制限はなくなりますか?

製品固有の制限はなくても、地盤、路盤、舗装、既存躯体の設計条件があります。大型車や重量のあるEVを想定する場合は、設計荷重を確認します。

埋め戻した部分が沈下することはありますか?

材料、層厚、締固め、排水などが不適切なら沈下する可能性があります。施工方法と品質管理記録、沈下時の保証内容を確認します。

将来、機械式駐車場を再設置できますか?

技術的に絶対不可能とは限りませんが、舗装撤去、掘削、残材搬出、躯体補修などが必要になるため、鋼製平面化より負担が大きくなりやすい方法です。

アスファルトとコンクリートのどちらがよいですか?

利用再開までの期間、費用、車両荷重、既存舗装、補修方法で選びます。どちらも下部の締固めと排水が適切であることが前提です。

まとめ|材料価格より、重量・締固め・排水を重視する

埋め戻し工法の主な特徴は次のとおりです。

  • ピットへ砕石などを充填して舗装する
  • 浅く搬入しやすい現場では費用を抑えられる場合がある
  • 機械設備と床下空間を廃止できる
  • 埋め戻し材による追加重量を算定する必要がある
  • 層ごとの締固めと品質管理が沈下防止の要点になる
  • 排水ポンプを必ず撤去できるとは限らない
  • 大型車を含む完成後の設計荷重を確認する
  • 将来の機械式駐車場再設置は難しくなる
  • 舗装の補修と表面排水の管理は残る

埋め戻し工法は、適切な現場であれば機械式駐車場を分かりやすい平面駐車場へ変えられる方法です。ただし、安価な材料を投入することだけを目的にすると、沈下や排水不良が長期的な負担になります。ピットの寸法、追加重量、締固め、排水、舗装、保証まで一体で比較することが重要です。

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